こだわること こだわらないこと

春からスタートした就職戦線は夏になってヤマ場を迎える。 夏は、学生にとっては意中の企業から内定を貰って喜びの声を聞く反面、なかなか内定が出ず、苦しむ学生が目立つ時期でもある。今回は就職活動のヤマ場を迎えて足踏みをしている学生について考えてみたい。志望業界や職種について悩みが出てくる時期だ。3年次から自己分析を行い、企業研究をして業界や企業を決めて準備してきたがなかなか成果が出ない人も多いだろう。その際に志望業界や職種を変えないで初志貫徹をすべきなのかどうか迷うのではなかろうか。

私は半年活動して内定のメドが立たない場合は一旦、志望を白紙に戻して一から就職活動を組み立てるほうがいいと考えている。仮に3月から会社説明会に参加したとすると夏までに数十社は回っているはずだ。それでいい結果が出ないとしたら、何か大きな間違いを犯しているはず。それを見つけるために一旦、活動を白紙に戻して自己分析と業界研究をやり直したほうがいい。

就職戦線の後半となった時期に、ある学生に出会った。東京の有名校の学生で金融志望である。典型的な有名大学の就活パターンといっていい。エントリーシート提出、OBリクルーターとの接触、面接と進むも一向に内定が取れない。すっかり自信をなくしてしまい、途中1ヶ月間はまったく就職活動をしなかったそうである。気を取り直して就職活動を再開、偶然に合同会社説明会である中堅メーカーを見つけ、説明会に参加、面接や試験を突破して内定、そのまま入社ということになった。

彼には入社までの採用活動の途中で何度か質問したことがある。「なぜ、金融志望だったの?」「先輩の多くが金融に就職していましたし、自分の周りも金融志望の学生がおおかったので・・・」。「なぜ、このメーカーに決めたの?」「知れば知るほど、面白い会社だと思って。自分にあっているのではないかと思って・・」。志望動機は持っているようであいまいなケースも多い。

たとえば、業界についての認識も参考書に書かれているような一般的な評価が中心で、その会社自体のことは知らないケースが多いのである。彼の場合も金融志望という方向性は明確にあったが、個々の企業の中身については知識が貧弱で、自分との相性もいま一つしっくりこなかったと思われる。彼が入社した会社はそれまで回っていた企業から比べると何十分の一くらいの小さい会社で金融とは正反対の製造業である。しかし、彼は自分とその会社との距離感がないことで入社を決めたのである。


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